親が認知症になると、親名義の口座からお金が動かせなくなることがあります。いわゆる「口座凍結」です。
介護のお金の話で、いちばん大きな分かれ道がここです。起きてからできることは少なく、起きる前ならいくつも手があります。
この記事では、口座凍結が起きる仕組み、凍結されたらどうなるか、その前にできる備えをまとめました。
口座凍結とは何が起きることか
認知症の診断が出たら自動で凍結される、という仕組みではありません。銀行が「本人の判断能力が失われている」と把握した時点で、取引を制限する運用です。
きっかけは、窓口での受け答え、家族からの申し出、施設からの連絡などです。銀行は本人の財産を守る立場なので、判断能力の喪失が分かれば、止めるほかありません。
制限されると、窓口での引き出し、定期の解約、振込、カードの再発行が、本人以外にはできなくなります。暗証番号を知っていても、カードの紛失や磁気不良が起きた時点で行き止まりです。
凍結されたらどうなるか
原則は、成年後見人を立てて、後見人が本人のために口座を管理する形です。家庭裁判所への申立てから始まり、動き出すまで数か月かかります。
例外は、親の預貯金は誰が管理する?代理で下ろす方法と限界の記事で書いた全国銀行協会の指針です。医療費や施設費など本人の利益が明らかな支払いに限り、家族の依頼に応じる余地があります。ただし限定的で、銀行の判断次第です。
つまり、凍結後の選択肢は「成年後見か、限定的な例外か」の2つしかありません。ここから先の話は、成年後見制度の実際。費用・手続き・後見人にできることの記事に書いています。
起きる前にできる備え
備えは、かんたんな順に4段階あります。全部やる必要はなく、親の状態と資産に合わせて選びます。
口座凍結への備え(かんたんな順)
上の2つはお金がほぼかからず、銀行の窓口で済みます。下の2つは契約で、費用と準備が要ります。違いは任意後見と家族信託はどう違う?元気なうちに選べる2つの方法の記事で比べています。
どの備えも、本人の判断能力があるうちにしか作れません。「まだ早い」と思ううちが、作れる時期です。
介護費用で本当に困るかの見立て
すべての家庭で大がかりな備えが要るわけではありません。見立ての目安を挙げます。
- 年金の範囲で費用が収まり、支払いが振替になっているなら、凍結が起きても日々の暮らしは回ります
- 預貯金を取り崩さないと費用が払えない見込みなら、代理の仕組みか契約型の備えが要ります
- 自宅を売って施設費用に充てる可能性があるなら、家族信託か任意後見を検討する場面です。凍結後に不動産を売るには成年後見しかなく、売却には家庭裁判所の許可が要ります
まとめ
口座凍結は、銀行が判断能力の喪失を把握した時点で起きます。起きたあとの道は、成年後見か、医療費等に限った例外対応の2つだけです。
備えは、支払いの自動化、代理人カード、任意後見、家族信託の4段階。どれも本人が元気なうちにしか作れません。
この記事は2026年9月時点の情報で書いています。取引制限の運用は銀行ごとに異なります。
出典(1件)
- 全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方(2021年2月)(認知判断能力が低下した顧客との取引の考え方、親族による払出しへの限定的な対応、成年後見制度の利用促進/2026年9月確認)
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