親の介護でいちばんこじれやすいのは、制度の話ではなく兄弟の話です。誰が動いて、誰がいくら払うのか。
うちは仲がいいから大丈夫、と思っていても、月に数万円の負担が何年も続くと、それぞれの家の事情が顔を出してきます。
この記事では、兄弟間で費用分担を決めるときの考え方と、あとで揉めないための記録のしかたをまとめました。
前提。介護費用は親のお金から払う
分担の話を始める前に、順番があります。介護費用はまず親の年金と預貯金から払う。子のお金で払うのは、親のお金で足りない分だけです。
理由は介護費用は親のお金で払う。子が立て替えないほうがいい理由の記事に書いたとおりで、子の家計と老後を守るためでもあり、相続のときの揉めごとを減らすためでもあります。
兄弟で分担するのは、その「足りない分」と、お金以外の負担です。
分担するものは3種類ある
- お金。施設費用の不足分、通院の付き添い交通費、日用品代など
- 時間と労力。通院付き添い、施設との連絡、ケアマネジャーとの調整、書類の手続き
- 帰省の負担。遠方の子は交通費と移動時間がかかります
揉めるのは、お金の分担だけを均等にしようとするときです。近くに住む子が毎週動いているのに、お金は3等分では、動いている側に不満がたまります。
お金・時間・距離の3つを並べて、全体でならして考えると話がまとまりやすくなります。動けない分をお金で多めに持つ、という組み方です。
法律上はどうなっているか
民法では、直系血族と兄弟姉妹はお互いに扶養する義務があります(民法877条)。子が複数いる場合の分担は、まず当事者の協議で決めます。まとまらなければ家庭裁判所が決める仕組みです(民法878条・879条)。
ただしこの義務は、自分の生活を犠牲にしてまで親を養う義務ではないと解されています。負担の割合も、各自の収入や事情に応じて決めるもので、均等と決まっているわけではありません。
裁判所まで行くケースはまれです。実際はほとんどが話し合いで決まります。だからこそ、話し合いの質と記録が大事です。
決めておくこと4つ
- 窓口役を1人決める。施設・病院・ケアマネジャーとの連絡役。全員がバラバラに連絡すると現場が混乱します
- お金の管理役を1人決める。親の口座から払う係。窓口役と同じ人でも構いません
- 不足分の分担割合。均等か、収入に応じてか、動けない人が多めか
- 報告のしかた。月1回、支出の一覧を全員に共有するなど
「言った・言わない」「使い込んだのでは」という疑いは、報告がないところに生まれます。管理役を守るためにも、共有の仕組みは最初に作っておきます。
記録のしかた
むずかしい帳簿はいりません。残すのは3つです。
- レシート・領収書。封筒に月ごとにまとめるだけでも足ります
- 支出の一覧。日付・内容・金額・誰が払ったか。スマホの共有メモや家計簿アプリで十分です
- 決めたことのメモ。分担割合や役割を決めたら、LINEのグループなど文字が残る場所に書いておきます
この記録は、相続のときにそのまま効いてきます。親の口座から大きなお金が動いた形跡があると、相続人の間で説明を求められます。使途の記録があれば、その場で答えられます。
親の医療費は医療費控除にできる?対象と申告のしかたや親を扶養に入れると税金はどうなる?扶養控除と障害者控除の申告にも、誰がいくら払ったかの記録が要ります。記録は税金の面でも無駄にはならないわけです。
介護した分は相続で報われるか
相続には寄与分という仕組みがあります(民法904条の2)。親の財産の維持に特別の貢献をした相続人は、その分多く受け取れる余地があるものです。
ただし、通常の親子の助け合いの範囲は「特別の貢献」と認められにくく、認められる場合も、貢献を示す記録が前提です。
「介護を全部やったのだから多くもらえるはず」が通るとは限りません。だからこそ、負担が偏っているなら生前のうちに、お金の分担でならしておくほうが確実です。
まとめ
介護費用はまず親のお金から。兄弟で分担するのは不足分と、時間・労力・距離を含めた負担全体です。
窓口役・管理役・分担割合・報告のしかたの4つを最初に決め、支出は一覧とレシートで記録する。この記録が、介護中の疑いも、相続のときの揉めごとも減らしてくれます。
出典(2件)
- e-Gov法令検索 民法(877条 扶養義務者、878条・879条 扶養の順位と程度は協議・家庭裁判所が定める、904条の2 寄与分/2026年9月確認)
- 裁判所 扶養請求調停(扶養の分担は当事者の協議、まとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判/2026年9月確認)
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