親の医療費は医療費控除にできる?対象と申告のしかた

親の医療費は医療費控除にできる?対象と申告のしかた 入院・医療費

親の入院費や通院費を子が払ったとき、その分を子の確定申告で医療費控除にできる場合があります。親と別居していても、条件を満たせば対象です。

一方で、高額療養費で戻った分は差し引く、個室の差額ベッド代は対象外など、入院特有の線引きがあります。

この記事では、親の医療費を子の控除にできる条件、入院費用の対象・対象外、計算と申告のしかたをまとめました。

親の医療費を、子の控除にできる条件

医療費控除は、自分の医療費だけでなく、「生計を一にする」配偶者や親族のために払った医療費も対象です。親はこの「親族」に入ります。

「生計を一にする」は、同居という意味ではありません。別居していても、生活費や療養費を常に送っていれば、生計を一にしているとみなされます。仕送りをしている親は、典型的にあてはまります。

逆に、同居していても、お互いの収入で別々に生活している場合は、生計を一にしているとは言えません。親の年金で親の医療費を払っているなら、それは親自身の医療費控除の話です。

誰の控除になるか

子の控除になる
子が払った
+
親と生計を一にしている
(同居、または仕送り)
親の控除になる
親の年金・貯金から払った
または
親と子の生計が別

親に所得税がかかっていない(年金だけで少額)なら、親の控除にしても戻る税金がありません。子が払って子の控除にするほうが、戻りが出ます。

親の年金が少なく、所得税を払っていない場合、親の側で控除を受けても戻る税金がありません。子が医療費を払い、子の申告で控除するほうが、税金が戻ります。誰が払うかを決めるとき、この点は考えに入れてよいところです。

入院費用のうち、対象になるもの・ならないもの

入院の請求書は、医療費と、それ以外の費用の2階建てです。医療費控除の線引きは、高額療養費の線引きとは少し違います。

費目医療費控除備考
診察・検査・手術・薬の自己負担対象高額療養費で戻った分は差し引く
入院中の食事代対象
差額ベッド代場合による治療上の必要があれば対象。本人や家族の都合で個室にした分は対象外
おむつ代場合による寝たきりで医師の「おむつ使用証明書」があれば対象
付き添いを頼んだ費用対象看護師等や、特に依頼した人に払った所定の料金。家族への謝礼は対象外
通院の電車・バス代対象本人の分。付き添いが必要な場合は付添人の分も
タクシー代原則対象外公共交通機関が使えない場合(緊急時、足が不自由など)は対象
自家用車のガソリン代・駐車場代対象外
病衣・タオルのレンタル、テレビカード対象外
介護保険のサービス自己負担一部対象施設サービス、訪問看護など一定のもの。領収書に対象額が書かれる
国税庁タックスアンサーNo.1122・No.1126をもとに整理

差額ベッド代は誤解が多い項目です。本人や家族が希望して個室に入った分は対象外で、医師が治療上の必要から個室を指示した場合だけ対象です。入院費は医療費だけではない。差額ベッド代など「上限のない出費」の全体像の記事で書いたとおり、後者はそもそも差額ベッド代を請求されないことが多いです。控除の対象になる差額ベッド代は、あまり残りません。

おむつ代は、医師の証明があれば対象です。要介護で長く使うなら、病院や主治医に「おむつ使用証明書」を頼んでおきます。2年目以降は、市区町村が発行する主治医意見書の写しなどで代えられる場合があります。

控除額の計算

1年間(1月1日〜12月31日)に払った医療費から、2つを差し引いた額が控除額です。

払った医療費の合計
− 保険金・高額療養費などで戻った額
− 10万円(所得が200万円未満なら所得の5%)
= 医療費控除額(上限200万円)

「戻った額」には、高額療養費、生命保険や医療保険の入院給付金、出産育児一時金などが入ります。高額療養費で戻った分は、必ず差し引きます。高額療養費の申請が翌年になっても、戻る見込みの額で計算します。

控除額がそのまま戻るわけではありません。控除額に自分の所得税率を掛けた分が戻ります。たとえば控除額が20万円で税率が10%なら、所得税の戻りは2万円です。翌年の住民税も下がります。

10万円の足切りがあるので、年間の医療費がそれ以下なら控除は出ません。親の入院があった年は、家族全員の分を合わせると10万円を超えることが多いです。自分や配偶者、子どもの通院費もまとめて数えます。

申告のしかた

医療費控除は年末調整では受けられず、確定申告が必要です。期間は翌年の2月16日から3月15日ですが、還付申告は1月から出せます。

用意するものは次の3つです。

  • 医療費控除の明細書(領収書をもとに、病院ごと・人ごとに集計して記入)
  • 健康保険の「医療費通知」(あれば明細書の記入を省略できる)
  • 源泉徴収票

領収書の提出は不要ですが、5年間は自宅で保管します。マイナポータルと連携すると、医療費通知の情報が申告書に自動で入ります。

親の分を子が申告するとき、明細書の「医療を受けた方の氏名」に親の名前を書きます。親の医療費通知は親の保険者から親あてに届くので、入院した年は捨てずに取っておいてもらいます。

申告を忘れた年の分は、5年前までさかのぼって還付申告できます。親の入院があった年に申告していなければ、いまからでも間に合う場合があります。

まとめ

親の医療費を子が払い、仕送りなどで生計を一にしていれば、子の医療費控除にできます。親に所得税がかかっていないなら、子の控除にしたほうが税金が戻ります。

入院費のうち、医療費と食事代は対象、本人都合の差額ベッド代と日用品は対象外です。高額療養費で戻った分は差し引いて計算します。

確定申告が必要で、領収書は5年保管。忘れた年も5年前までさかのぼれます。

この記事は2026年8月時点の制度で書いています。個別の判断は税務署か税理士にご確認ください。

出典(3件)

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さちこ

初めての手続きは、誰でも戸惑います。私自身がそのときに慌てないよう調べたことを、手引きの形で残しています。元地方公務員・FP2級。

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