介護のお金が足りない。この状況には、段階に応じた制度がいくつも重なって用意されています。
ただ、どれも申請しないと始まらず、窓口で全部をまとめて教えてもらえるとは限りません。順番に並べれば、いま使えるものが見えてきます。
この記事では、負担を軽くする制度を、軽い順から生活保護まで段階的にまとめました。
全体の地図
負担を軽くする制度の段階
1は高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算。払い戻しの仕組みの記事、2は介護施設の費用相場。月額と初期費用、施設ごとの違いの記事で書いたので、この記事は3から5を中心にします。
段階3。個別の軽減
- 社会福祉法人等利用者負担軽減。社会福祉法人が運営する特養やヘルパー事業所では、低所得で生計が困難な人の利用者負担・居住費・食費が原則4分の1軽減される制度があります。対象になる事業所かどうかは、施設か市区町村に聞きます
- 市区町村の独自助成。おむつ代の支給、介護用品の助成、低所得者向けの利用料軽減など、自治体ごとのメニューがあります。市区町村の介護保険課で「低所得者向けの軽減は他にありますか」と聞くのが早いです
- 保険料の減免・徴収猶予。災害や所得の急減時には、介護保険料そのものの減免制度があります
段階4。境界層措置
あまり知られていませんが、生活保護の一歩手前に、もうひとつ仕組みがあります。
境界層措置は、「このままの負担では生活保護が必要になる。ただ、負担を軽い段階に下げれば保護を受けずに済む」という人に、軽い方の基準を適用する制度です。介護保険料の段階、高額介護サービス費の上限、施設の居住費・食費の負担段階を、それぞれ下の段階に付け替えられます。
手続きの入口は、福祉事務所(生活保護の窓口)です。「保護は要しないが境界層に該当する」という証明を受け、市区町村の介護保険課に申請する流れです。
「生活保護までは」とためらう人にとって、その手前で使える正式な制度です。窓口で自分から聞かないと出てこないことが多いので、名前だけでも覚えておく価値があります。
段階5。生活保護
それでも足りなければ、生活保護です。介護の費用は介護扶助、医療費は医療扶助として、自己負担なしで受けられます。
ためらいの多い制度なので、実務の要点だけ書きます。
- 親だけで申請できます。世帯単位の制度なので、別世帯の子の収入は原則、直接の審査対象ではありません。子に扶養の可否を尋ねる照会は行われますが、扶養は保護の前提条件ではありません
- 施設に入ったままでも申請できます。特養の費用が払えなくなったら退所、ではなく、保護につないで入所を続ける道があります
- 持ち家があっても、住み続ける自宅なら保有が認められる場合があります。処分を求められるかは資産の内容次第です
- 申請先は、親の住所地の福祉事務所です。地域包括支援センターやケアマネから相談をつないでもらえます
「子が援助できるうちは受けられない」という思い込みで、申請自体をあきらめる家庭が少なくありません。援助できる範囲は援助し、足りない分を制度で埋める形は、恥ずかしいことでも珍しいことでもありません。
相談の持ち込み方
お金の相談は、どこか1か所に全部話すのが近道です。持ち込み先は、地域包括支援センターか、市区町村の介護保険課。
持っていくのは、親の年金額が分かるもの、介護と医療の請求書、預貯金のおおよその額。「毎月これだけ足りない」が数字で言えると、使える制度の照合が一度で進みます。
まとめ
負担を軽くする制度は、上限系→非課税世帯の軽減→個別の軽減→境界層措置→生活保護、と段階的に重なっています。
生活保護の手前には境界層措置があり、生活保護は親だけ・施設に入ったままでも申請できます。数字を持って、地域包括支援センターか介護保険課へ。
この記事は2026年9月時点の制度で書いています。軽減の内容は市区町村で異なります。
出典(3件)
- 厚生労働省 介護保険制度(社会福祉法人等による利用者負担軽減制度、保険料の減免/2026年9月確認)
- 介護保険法・同施行令(境界層該当者への負担軽減の適用/2026年9月確認)
- 厚生労働省 生活保護制度(介護扶助・医療扶助、申請は世帯単位、扶養照会は保護の要件ではないこと/2026年9月確認)
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