親が元気なうちに、お金の管理を任せる形を決めておく方法は2つあります。任意後見と家族信託です。
どちらも「判断能力を失う前にしか作れない」点は同じで、性格はだいぶ違います。名前が似ているぶん、混同されやすい2つでもあります。
この記事では、2つの仕組みの違い、費用、向いている場面の見分け方をまとめました。
2つの仕組み
任意後見
「判断能力を失ったら、この人に後見人になってほしい」を、本人が元気なうちに公正証書で契約しておく仕組みです。成年後見の「誰が後見人になるか分からない」問題を、先に自分で決めておく形です。
発効するのは、判断能力が下がったあとです。家庭裁判所に申立てをして、任意後見監督人(専門職)が選ばれた時点で始まります。監督人には報酬(月1〜2万円程度のめやす)がかかります。
家族信託
財産の一部(預金や自宅など)の管理を、契約で家族に託す仕組みです。親が「委託者」、子が「受託者」になり、信託した財産は子の管理で動かせます。
契約したときから使え、判断能力が失われても止まりません。信託口口座で管理し、自宅を信託に入れておけば、施設費用のための売却も受託者の判断でできます(契約の定め方によります)。
違いの早見
| 任意後見 | 家族信託 | |
|---|---|---|
| 始まる時期 | 判断能力が下がってから(監督人選任後) | 契約したらすぐ |
| 裁判所の関与 | あり(監督人が付く) | なし |
| 続く費用 | 監督人報酬 月1〜2万円程度 | 原則なし(家族に報酬を定めなければ) |
| 初期費用 | 公正証書の作成 数万円程度 | 専門家報酬+公正証書等で数十万円になることが多い |
| 身の回りの契約(施設入所など) | できる | できない(財産の管理だけ) |
| 財産を柔軟に動かす | 本人のためにしか使えない | 契約の範囲で柔軟(売却・建替えも設計可) |
向いている場面
- 施設の契約や役所の手続きまで任せたい:任意後見。身の回りの法律行為を代理できるのはこちらです
- 自宅の売却や賃貸まで備えたい:家族信託。凍結の影響を受けずに財産を動かせます
- 資産が預貯金だけで、額も大きくない:どちらも大がかりです。代理人カードと支払いの自動化で足りる場合が多いです
2つは併用もできます。財産の管理は信託で、身の回りの契約は任意後見で、という組み合わせです。
家族信託の初期費用は依頼先による幅がとても大きい領域です。複数の司法書士・専門家から、費用の内訳(コンサルティング料・公正証書・登記)つきで見積もりを取って比べます。
どちらを選ぶにしても、決めるのは本人です。親の財産をどうするかの話ではなく、「困ったとき誰に任せたいか」を本人に聞く話として持ちかけると、進めやすいです。
まとめ
任意後見は「誰に任せるかを先に決める後見」、家族信託は「財産の管理を契約で家族に移す」仕組みです。前者は身の回りの契約まで、後者は財産を柔軟に動かすことに強みがあります。
どちらも作れるのは判断能力があるうちだけ。資産が少なければ、銀行の代理の仕組みで足りることも多いです。
この記事は2026年9月時点の制度で書いています。個別の設計は司法書士・弁護士等にご相談ください。
出典(2件)
- 裁判所 任意後見監督人選任(任意後見契約の発効=任意後見監督人の選任、申立ての手続/2026年9月確認)
- 法務省 成年後見制度・任意後見制度(任意後見契約は公正証書で締結、制度の概要/2026年9月確認)
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