入院して2週間ほど経つと、「そろそろ次を考えましょう」と転院や退院の話が出ます。まだ元気になっていないのに、と戸惑う家族は多いです。
これは病院が冷たいからではなく、いまの病院の役割が「治療の急性期」に区切られているためです。次の段階は、別の病院や病棟が受け持ちます。
この記事では、入院期間の目安、転院を促される仕組み、転院先の種類、そのときに家族がやることをまとめました。
入院は何日できるか。平均は15日
厚生労働省の病院報告によると、2024年の一般病床の平均在院日数は15.5日です。手術や急な病気で入る病床がこれにあたります。
一方、長期の療養を前提にした療養病床は117.4日です。同じ「入院」でも、病床の種類で想定している期間がまったく違います。
救急搬送された親が入るのは、ほぼ一般病床です。つまり、最初の病院にいられるのは2週間前後が目安で、そこから先は別の場所に移る前提で組まれています。
転院を促される理由
病院の病床は、役割ごとに分かれています。
病床の役割と、いられる期間の目安
(一般病床)
(回復期リハビリ病棟・地域包括ケア病棟)
(療養病床)
急性期の病院は、次の急患を受け入れるために病床を空ける必要があります。治療が一段落して容体が安定すれば、役割は終わりです。
加えて、入院が長引くほど病院に入る診療報酬が下がる仕組みがあります。病院の側にも、早めに次へ送る理由があります。
「追い出される」と感じる場面ですが、急性期の治療を終えて次の段階に進む、というのが制度上の位置づけです。
転院先の種類
急性期のあとに行く先は、親の状態で決まります。主に4つです。
回復期リハビリテーション病棟
脳卒中や骨折のあとに、集中的にリハビリをして家に帰ることを目指す病棟です。1日に最大3時間のリハビリを受けられます。
入れる期間は、病気ごとに上限が決まっています。
| 状態 | 上限 |
|---|---|
| 脳卒中・脊髄損傷・頭部外傷など | 150日 |
| 高次脳機能障害を伴う重い脳血管障害など | 180日 |
| 大腿骨・骨盤・脊椎などの骨折、2か所以上の多発骨折 | 90日 |
| 手術や肺炎のあとの安静で体力が落ちた状態(廃用症候群) | 90日 |
| 股関節・膝関節の人工関節置換術後 | 90日 |
この上限は「いられる期間」であって「必ずいる期間」ではありません。状態がよくなれば早く退院します。
地域包括ケア病棟
急性期を終えたあと、家に帰る準備を整えるための病棟です。回復期リハビリ病棟ほど集中的なリハビリはありませんが、対象の病気に制限がありません。入院は最長60日です。
同じ病院の中で、急性期の病棟から地域包括ケア病棟に移ることもあります。この場合は「転棟」と呼び、建物は変わりません。
療養病床(医療療養)
点滴や痰の吸引など、医療的な処置が続けて必要な人が長く療養する病床です。リハビリで回復を目指すというより、状態を保つことが中心です。
介護老人保健施設(老健)
病院ではなく介護施設ですが、退院後の行き先としてよく出てきます。リハビリをしながら在宅復帰を目指す施設で、利用には要介護認定が要ります。
病院と施設のどちらに行くかは、医療がどれだけ必要かで決まります。医療の必要が少なく、リハビリと生活の支えが主なら老健、医療が続けて必要なら療養病床です。施設の種類は、介護施設の種類は6つ。特養・老健・有料・サ高住の違い早見の記事で分けて書いています。
転院の話が出たとき、家族がやること
医療ソーシャルワーカーに相談する
転院先を探すのは、家族が一人でやる仕事ではありません。病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)がいて、転院先の候補を出し、受け入れの打診までしてくれます。
転院の話が出たら、その日のうちに「相談室に行きたい」と看護師に伝えます。医療ソーシャルワーカーの使い方は、医療ソーシャルワーカーには何を相談できるかの記事にまとめています。
聞いておくこと
転院の話が出たときに確認すること
- いまの状態で、家に帰るのは難しいのか。難しいなら何が理由か
- 候補の転院先はどこか。それぞれ、いられる期間と費用の目安
- 転院の時期はいつごろか。急ぐ事情があるか
- 要介護認定の申請を、いま出しておくべきか
最後の1つは大事です。退院後に介護サービスや老健を使うなら要介護認定が要り、申請から結果まで1か月前後かかります。入院中に申請しておけば、退院のときに間に合います。申請の流れは、要介護認定の記事で書きます。
転院先を見学する
候補が出たら、できれば家族が見学します。建物の新しさより、面会のしやすさ、家からの距離、リハビリの時間、費用(差額ベッド代の有無)を見ます。
遠方で見学に行けないときは、電話で同じことを聞けば足ります。
転院のときの費用
転院すると、入院費の計算は新しい病院で最初からです。高額療養費の上限は月ごとなので、月をまたいで2つの病院に入院すると、それぞれの月で上限まで払う形です。
移動は、介護タクシーや民間救急を使うことが多く、距離によって数千円から数万円です。病院の車で送ってくれる場合もあります。医療ソーシャルワーカーに聞くと、手配まで含めて教えてくれます。
まとめ
急性期の病院にいられるのは、平均15日前後です。転院の話は、治療が一段落したら必ず出ます。
行き先は、回復期リハビリ病棟・地域包括ケア病棟・療養病床・老健の4つが主で、医療とリハビリの必要度で決まります。
転院先を探すのは医療ソーシャルワーカーの仕事です。家族は相談室に行き、要介護認定の申請を入院中に出しておきます。
この記事は2026年8月時点の制度と統計で書いています。入れる期間や対象は、病院の種類や診療報酬の改定で変わります。
出典(2件)
- 厚生労働省 令和6年(2024)医療施設(動態)調査・病院報告の概況 Ⅱ病院報告(病床の種類別の平均在院日数=病院全体25.6日・一般病床15.5日・療養病床117.4日/2026年8月確認)
- 厚生労働省 東北厚生局 A308 回復期リハビリテーション病棟入院料(施設基準抜粋)(回復期リハビリテーションを要する状態と算定上限日数=脳血管疾患等150日・高次脳機能障害を伴う重症例180日・大腿骨等骨折90日・廃用症候群90日・人工関節置換術後90日/2026年8月確認)
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