入院の書類には、身元保証人の欄があります。頼める人がいないと、そこで手が止まります。
ただ、この欄が空欄でも入院はできます。保証人がいないことだけを理由に入院を断ってはならないと、国が示しています。
この記事では、身元保証人に求められている役割、誰がなれるか、頼める人がいないときの進め方をまとめました。
病院が身元保証人に求めていること
「身元保証人」という言葉に、法律上の決まった定義はありません。病院によって「連帯保証人」「身元引受人」「緊急連絡先」と呼び方が違い、求める中身も少しずつ違います。
ただ、中身を分解すると、おおむね次の5つに収まります。
- 入院費が支払われなかったときの保証
- 容体が急変したときの連絡先
- 治療方針を決めるときの相談相手
- 退院するときの受け入れ、迎え
- 亡くなったときの、遺体と荷物の引き取り
身元保証人の5つの役割と、代わりに担える人・仕組み
治療への同意そのものは、本人が行います。保証人が代わりに同意するわけではなく、本人の判断を支える立場です。
5つの役割を、1人が全部担う必要はありません。支払いは本人の預金から、連絡先は近くに住む知人に、というように分けて考えると、頼める相手の幅が広がります。
誰がなれるか
一般的な条件は、成人であること、本人と生計が別であること、連絡がつくことの3つです。
子や配偶者、兄弟姉妹が典型ですが、親族に限るという決まりはない病院が多いです。友人や知人でも受け付ける病院はあります。条件は病院の規定で決まるので、入院手続きの窓口で確認します。
別居や遠方でも構いません。同居している必要はなく、電話がつながれば足ります。
保証人と緊急連絡先を分けて、それぞれ別の人を書ける病院もあります。1人で全部を引き受ける形にこだわらない病院は増えています。
頼める人がいなくても、入院はできる
厚生労働省は2018年4月、身元保証人がいないことだけを理由に入院を断ることは医師法に触れるという通知を出しています。国のガイドラインでも、入院や施設入所を拒む理由にはならないと整理されています。
だから、書類の保証人欄が埋まらなくても、入院そのものは進みます。
進め方
保証人欄は空欄のまま提出し、病院の医療相談室に「頼める人がいない」と伝えます。
医療相談室には、医療ソーシャルワーカーという相談担当がいます。保証人がいない患者は珍しくないので、病院側にはたいてい代わりの進め方があります。
病院が用意している対応の例です。
- 入院保証金を多めに預ける形にする
- 保証人は空欄で、緊急連絡先だけを指定する
- 成年後見人が付いている場合は、その旨を伝える
成年後見人は保証人にはなりませんが、病院との連絡窓口や、支払いの手続きは担えます。後見人が付いていれば、その連絡先を伝えるだけで手続きが前に進みます。
保証人の代わりになるもの
頼める人がいないとき、代わりの仕組みは3つあります。それぞれ、担える範囲が違います。
成年後見制度
親の判断能力が落ちている場合の仕組みです。家庭裁判所が後見人を選び、財産の管理と、契約などの法律行為を本人に代わって行います。
入院費の支払いや、病院との連絡はできます。ただし、治療への同意はできません。また、判断能力がある親には使えません。
日常生活自立支援事業
社会福祉協議会が行っている事業で、日々のお金の出し入れや、通帳・印鑑などの書類の預かりを支援します。判断能力に少し不安がある人が対象です。
保証人になることはできません。支払いの実務を助ける仕組みなので、保証人の代わりというより、支払いの心配を減らす手段です。
民間の身元保証サービス
入院や施設入所のときの保証人を引き受け、日常の支援や、亡くなったあとの手続きまでを一括で請け負う民間の事業者です。国は「高齢者等終身サポート事業」と呼んでいます。
保証人そのものを立てられる、唯一の仕組みです。ただ、費用と契約の中身に注意が要るので、次の見出しで分けて書きます。
民間の身元保証サービスを検討するとき
総務省が2023年に全国の事業者を調べたところ、利用を始めるときに必要な費用は、少なくとも100万円以上でした。事業者によって費目も金額もばらばらで、標準的な相場は示せないと報告されています。
費用の中身は、入会金や契約金、身元保証料、亡くなったあとの手続きのために先に預ける「預託金」などです。調査した事業者の77%が預託金の仕組みを持っていました。
入会金や契約金は、解約しても返金しないと契約書に書いている事業者があります。返金の決まり自体が契約書に無い事業者もありました。
こうしたトラブルを受けて、2024年6月に内閣官房と関係省庁が事業者向けのガイドラインを出しました。守る義務まではありませんが、契約前に見る点はここから拾えます。
契約前に確認する4点
- 契約書と重要事項の説明書が、書面で渡されるか
- 費用が「入会金」「預託金」「都度払い」に分けて書かれているか
- 解約の条件と、返金の有無・計算方法が書面にあるか
- 預託金を事業者の運転資金と分けて管理しているか
契約する前に、地域包括支援センターに事業者名を伝えて相談することもできます。契約したあとで不安が出たら、消費生活センター(電話188)が相談先です。
入院の保証人だけが目的なら、100万円以上を先に払う契約は釣り合わないことが多いです。まず病院の医療相談室に相談し、それでも埋まらないときに検討する順番で足ります。
施設に入るときは、また別の話
入院の保証人と、介護施設に入るときの保証人は、求められる中身が違います。
施設では、亡くなったあとの居室の明け渡しや荷物の引き取りの比重が大きく、契約の期間も長くなります。そのぶん、保証人がいない場合の対応も施設ごとの差が大きいです。
施設のほうは、施設入居の身元保証人がいないとき。保証会社という手と注意点の記事に別にまとめています。
まとめ
身元保証人の役割は5つに分かれていて、1人が全部を担う必要はありません。
頼める人がいなくても、入院はできます。保証人欄は空欄で出し、医療相談室に伝えれば、病院側が進め方を持っています。
民間の身元保証サービスは、100万円以上の先払いと、返金の条件を書面で確かめてから判断します。
この記事は2026年8月時点の情報をもとに書いています。保証人の条件は病院ごとに違うので、入院先の窓口でご確認ください。
出典(4件)
- 内閣官房ほか 高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(令和6年6月)(身元保証等サービスの役割の整理、契約時の重要事項、預託金・解約料の考え方。脚注に平成30年4月27日厚生労働省医政局医事課長通知を明記/2026年8月確認)
- 総務省行政評価局 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書(令和5年8月)(利用開始時の費用が少なくとも100万円以上、預託金ありの事業者77.0%、入会金の返金取扱い/2026年8月確認)
- 消費者庁 いわゆる「高齢者等終身サポート事業」の利用に関する注意点(相談先として消費生活センター・地域包括支援センターを案内/2026年8月確認)
- 厚生労働省 「身元保証」がない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(平成30年度)(日常生活自立支援事業は身元保証人として契約できないこと、身元保証人の有無を退院支援の課題点としない考え方/2026年8月確認)
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