病院には、治療とは別に、お金や退院後のことを相談できる専門職がいます。医療ソーシャルワーカー(MSW)です。
多くの家族は、その存在を退院間際になって知ります。入院の早い段階から使えば、転院先探しも、介護保険の申請も、費用の相談も、一人で抱えずに済みます。
この記事では、相談できること、どこにいるか、相談のタイミング、行く前に整理しておくことをまとめました。
医療ソーシャルワーカーとは
病院で、患者と家族の「治療以外の困りごと」を担当する職種です。多くは社会福祉士の資格を持っています。
国は業務指針で、仕事の範囲を5つに整理しています。療養中の心理的・社会的な問題の調整、退院援助、社会復帰援助、受診・受療援助、経済的問題の解決です。
言い換えると、「治るかどうか」以外のほぼ全部が守備範囲です。退院先、介護保険、お金、家族の間の調整、仕事との両立。どれも相談できます。
相談できること
医療ソーシャルワーカーに相談できること
特に「退院先」と「介護保険」は、医療ソーシャルワーカーが動くことで進む速さが変わります。転院先の病院や施設への打診は、家族が電話するより、病院どうしで話すほうが早く、正確です。
お金の相談は、制度の案内までです。医療費を減らしてくれるわけではありませんが、使える制度を知らずに払いすぎることは防げます。
どこにいるか、どう呼ぶか
病院によって、所属する部署の名前が違います。「医療相談室」「地域医療連携室」「患者支援センター」「退院支援室」などです。
探すより、病棟の看護師に「ソーシャルワーカーさんと話したい」と言うのがいちばん早いです。看護師が取り次いでくれます。
相談は無料です。予約が要る病院もあるので、面会に行く日に合わせて、前日までに伝えておくと待ち時間が減ります。
小さな病院や診療所には、医療ソーシャルワーカーがいないこともあります。その場合は、看護師長か、地域の地域包括支援センターが代わりの相談先です。
相談のタイミング
早いほどよいです。目安は入院して1週間以内です。
理由は2つあります。急性期の入院は平均15日ほどで、転院の話はすぐ出ること。そして、要介護認定は申請から結果まで1か月前後かかり、退院に間に合わせるには入院中に動き出す必要があることです。
「まだ治療中だから相談するのは早い」と思う必要はありません。退院間際に初めて相談すると、選べる転院先が空いている所に限られます。早く動くほど、選択肢が残ります。
行く前に整理しておくこと
相談はその場で考えながらでも構いませんが、次のことが分かっていると、話が具体的に進みます。
相談前に分かっているとよいこと
- 親が入院前にどう暮らしていたか(一人暮らしか、誰と同居か、家の段差や階段)
- 退院後に誰がどれだけ関われるか(同居できるか、通える頻度、仕事の状況)
- 親の年金のおおよその額、貯蓄の有無、加入している保険
- 親本人がどうしたいと言っているか
- 家族の中で意見が違う点があれば、それも
全部揃っていなくて構いません。分からないことは「分からない」と伝えれば、何を調べればよいかを教えてくれます。
お金の話は言いにくいかもしれませんが、年金と貯蓄の額で、選べる施設の範囲が変わります。ここを伏せると、現実に合わない候補が出てきます。
医療ソーシャルワーカーにできないこと
治療の内容や見通しについての説明は、医師の仕事です。医療ソーシャルワーカーに聞いても、医師に確認するよう案内されます。
また、家族の代わりに決める立場ではありません。選択肢を並べて、それぞれの条件を説明するところまでが役割で、どれを選ぶかは家族と本人が決めます。
転院先や施設の「空き」を作ることもできません。候補の打診はしてくれますが、受け入れの可否は先方が決めます。
まとめ
医療ソーシャルワーカーは、退院先、介護保険、お金、家族の調整を相談できる病院の専門職です。相談は無料です。
看護師に「ソーシャルワーカーさんと話したい」と言えば取り次いでもらえます。入院して1週間以内に一度行っておくと、転院先の選択肢が残り、要介護認定も退院に間に合います。
この記事は2026年8月時点の情報で書いています。相談窓口の名前や体制は病院ごとに違います。
出典(1件)
- 厚生労働省健康局長通知 医療ソーシャルワーカー業務指針(平成14年11月29日健康発第1129001号)(業務の範囲=療養中の心理的・社会的問題の解決調整援助、退院援助、社会復帰援助、受診・受療援助、経済的問題の解決調整援助/2026年8月確認)
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