退院後の行き先はどう決まる?自宅・転院・施設の分かれ道

退院後の行き先はどう決まる?自宅・転院・施設の分かれ道 入院・医療費

「退院できます」と言われたのに、家に帰れる状態ではない。親の入院で、いちばん判断に迷うのがこの場面です。

退院後の行き先は、自宅・転院・施設の3方向に分かれます。どれを選ぶかは感覚ではなく、医療の必要度と、生活を支える体制の2つで決まります。

この記事では、行き先が決まる仕組み、3つの選択肢の条件と費用の目安、決めるまでの流れをまとめました。

行き先は2つの軸で決まる

退院後の行き先は、次の2つを掛け合わせて決まります。

  • 医療がどれだけ必要か(点滴、吸引、酸素、リハビリの量)
  • 生活を誰がどれだけ支えられるか(同居家族、通える頻度、介護サービスの利用)

退院後の行き先の考え方

支える人がいる・通える支える人がいない・遠方
医療の必要が少ない自宅+介護サービス老健 → 在宅か施設
または介護施設
リハビリが主に必要回復期リハビリ病棟 → 自宅回復期リハビリ病棟 → 老健・施設
医療が続けて必要自宅+訪問看護・訪問診療療養病床

典型的な組み合わせ。実際は本人の希望・費用・地域の空き状況で変わります

医療の必要度は医師が判断します。生活を支える体制は家族が判断します。家族が決める側の材料は「誰が、週に何日、何ができるか」で、ここが固まると行き先は自然に絞れます。

自宅に帰る

本人の希望としては、いちばん多い選択です。入院前の生活に戻れるかどうかは、歩行・食事・トイレ・入浴がどこまで自分でできるかで見ます。

全部が自分でできなくても、介護保険のサービスを組み合わせれば帰れる場合は多いです。訪問介護、デイサービス、訪問看護、福祉用具のレンタル(ベッドや手すり)、住宅改修(段差の解消)などです。

その前提になるのが要介護認定です。退院後に在宅サービスを使うなら、入院中に申請しておきます。申請から結果まで1か月前後かかるためです。

費用は、介護サービスの自己負担が1〜3割で、要介護度ごとに月の上限があります。要介護1で月1万6千円台、要介護5で3万6千円台が、1割負担で上限まで使った場合の目安です。区分ごとの額は、介護保険の記事で表にします。

一人暮らしに戻る場合は、夜間に誰もいない時間をどうするかが焦点です。ここは医療ソーシャルワーカーとケアマネジャーが一緒に考えてくれます。

転院する

家に帰るにはまだリハビリが要る、または医療が続けて必要、という場合です。行き先は回復期リハビリ病棟・地域包括ケア病棟・療養病床の3つで、それぞれの違いは入院は何日できる?転院を促される理由と、そのときの動き方の記事に書きました。

費用は入院なので、医療費には高額療養費の上限がかかります。食事代と差額ベッド代は別で、この点は最初の病院と同じです。

転院は「次の場所」であって「最後の場所」ではありません。回復期リハビリ病棟には上限日数があり、そこからまた自宅か施設かを決めます。転院先が決まっても、その先の行き先の検討は並行して進めます

施設に入る

医療の必要は少ないが、家で支える体制が作れない場合です。退院後に直接入る施設として多いのは、介護老人保健施設(老健)です。

老健は、介護保険法で「在宅での生活を目指す人に、医学的な管理のもとで介護とリハビリを行う施設」と定められています。退院と在宅の中間に置かれた施設で、原則は数か月で家に帰ることを目指します。要介護1以上が対象です。

費用は、介護サービス費の自己負担(1〜3割)+居住費+食費で、多床室なら月8万〜12万円前後、個室ならそれ以上が目安です。住民税非課税の世帯は、居住費と食費が下がる負担限度額認定があります。

長く暮らす前提の施設(特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サ高住など)に退院後すぐ入ることもあります。ただ、特養は待機があり、有料老人ホームは費用の幅が大きいです。種類と費用は、介護施設の種類は6つ。特養・老健・有料・サ高住の違い早見の記事にまとめています。

決めるまでの流れ

退院の見通しが立つと、病院は家族と話す場を設けます。多くの病院では、医師・看護師・医療ソーシャルワーカー・リハビリ担当が集まる「退院前カンファレンス」の形です。

退院先が決まるまで

1
入院1週間以内:医療ソーシャルワーカーに相談。要介護認定を申請
2
容体が安定:医師から退院の見通し。医療の必要度が分かる
3
家族で話す:誰が週何日、何ができるか。本人の希望を聞く
4
退院前カンファレンス:病院側と家族で方向を決める。ケアマネも同席することがある
5
手配:転院・施設なら見学と申込。在宅ならサービスと用具の手配、試験外泊

3番目の「家族で話す」を、病院から言われる前に済ませておくと、カンファレンスの場で決められます。逆に、ここが未整理だと結論が出ず、退院日だけが先に決まる形になりがちです。

迷ったときの考え方

本人は家に帰りたい、家族は無理だと思う。この食い違いはよく起きます。

いきなりどちらかに決めなくても、老健や回復期リハビリ病棟を「様子を見る期間」として使う進め方があります。数か月後にもう一度、家に帰れるかを判断する形です。

試験外泊という方法もあります。退院前に1〜2泊だけ家に帰り、何ができて何が難しいかをその場で確かめます。ここで出た課題をもとに、サービスや用具を足すか、別の行き先にするかを決めます。

一度決めた行き先を、あとで変えることはできます。最初の判断が最終決定ではありません。

まとめ

退院後の行き先は、医療の必要度と、生活を支える体制の2つで決まります。医療の側は医師が、支える側は家族が判断の材料を持っています。

自宅なら介護保険のサービス、転院なら回復期リハビリ病棟や療養病床、施設なら老健が入口です。どれも、要介護認定を入院中に申請しておくと動きやすくなります。

「誰が、週に何日、何ができるか」を家族で先に話しておくと、病院との話し合いで決められます。

この記事は2026年8月時点の制度で書いています。費用の目安は地域と施設で差があります。

出典(2件)

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さちこ

初めての手続きは、誰でも戸惑います。私自身がそのときに慌てないよう調べたことを、手引きの形で残しています。元地方公務員・FP2級。

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