親の判断能力が失われたあと、財産を動かす正式な道は成年後見制度です。口座凍結の出口として案内されるのも、ほぼこの制度です。
ただ、始めると途中でやめられず、費用も続きます。中身を知ってから使うかどうかを決める制度です。
この記事では、成年後見の仕組み、費用、申立ての流れ、使う前に知っておきたい実情をまとめました。
仕組み。家庭裁判所が後見人を選ぶ
本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3段階があります。ここでは最も重い「後見」を中心に書きます。
家庭裁判所に申立てをすると、裁判所が成年後見人を選びます。後見人は、本人の財産の管理と、契約などの法律行為を本人に代わって行います。預金の引き出し、施設との契約、不要になった家の売却(裁判所の許可制)などです。
誰が後見人になるかは、裁判所が決めます。家族を候補に立てられますが、財産が多い場合や親族間に対立がある場合は、司法書士や弁護士などの専門職が選ばれるのが実情です。専門職が選ばれると、報酬の支払いが本人の財産から続きます。
費用
| 項目 | 額の目安 |
|---|---|
| 申立ての実費(収入印紙・登記手数料・切手) | 7,000円前後 |
| 医師の鑑定(必要な場合のみ) | おおむね10万円以下 |
| 専門職後見人の報酬(月額) | 基本2万円。管理財産1,000万〜5,000万円で3〜4万円、5,000万円超で5〜6万円 |
月2万円なら年24万円。本人が亡くなるまで続く費用なので、10年で240万円の規模です。この継続費用が、この制度のいちばんの検討点です。
収入や資産が少ない場合、市区町村の「成年後見制度利用支援事業」で申立費用や報酬の助成を受けられることがあります。窓口は市区町村か地域包括支援センターです。
申立ての流れ
- 申立てできるのは、本人・配偶者・4親等内の親族など。身寄りがない場合は市区町村長
- 申立て先は、本人の住所地の家庭裁判所
- 必要書類は、申立書、診断書(かかりつけ医でよい)、財産の資料など。裁判所のサイトに書式と手引きがあります
- 申立てから開始まで、おおむね1〜3か月
書類は多いですが、家族だけでも出せます。地域の社会福祉協議会や中核機関が、書き方の相談に乗ってくれる地域もあります。
使う前に知っておきたい実情
- 一度始めると、本人が亡くなるまで原則やめられません。「不動産を売る間だけ」という使い方はできません
- 後見人が付くと、本人の財産は本人のためにしか使えません。孫への援助や生前贈与など、相続対策の類いは基本的にできなくなります
- 家族が後見人になっても、裁判所への報告義務が毎年あり、後見監督人が付けばその報酬もかかります
こう並べると重い制度ですが、判断能力を失ったあとに使える正式な道はこれだけです。重いと感じるなら、失う前に任意後見や家族信託で自分たちの形を決めておく。それが任意後見と家族信託はどう違う?元気なうちに選べる2つの方法の記事の話です。
まとめ
成年後見は、家庭裁判所が選んだ後見人が本人の財産を守る制度です。申立ての実費は7,000円前後、専門職が付けば月2万円からの報酬が亡くなるまで続きます。
後見人を選ぶのは裁判所で、途中でやめられません。使うかどうかは、この2点を分かったうえで決めます。
この記事は2026年9月時点の制度で書いています。申立ての詳細は、本人の住所地の家庭裁判所でご確認ください。
出典(2件)
- 東京家庭裁判所 成年後見制度(後見・保佐・補助)(申立ての手続・費用=申立手数料800円・登記手数料2,600円・切手、成年後見人等の報酬額のめやす=基本報酬月2万円、管理財産額による加算/2026年9月確認)
- 裁判所 成年後見制度の申立て(申立てできる者、必要書類、居住用不動産の処分許可/2026年9月確認)
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